KK’s PRIESTの結成までのあれこれはこちら。
https://riumetal.com/archives/51791718.html
K. K. ダウニング率いるKK’s PRIESTのデビューアルバムがついに発表された。上記の記事でもおわかりだと思うが、言動で話題になっていたK. K. ダウニングのサウンドのほうはどうか気になっていた。
結論はJUDAS PRIEST直系の正統派メタル。JUDAS PRIEST直系って言葉がおかしいかもしれない。JUDAS PRIESTに42年間も中心人物として在籍していたギターのK. K. ダウニング、7年間在籍したボーカルのティム”リッパー”オーウェンズがいるバンドだからだ。
このバンドはツインリードギターが本当に気持ちいい。SinnerとかPriestとかSentinelとか、JUDAS PRIESTをイメージさせる言葉も多いね。 JUDAS PRIESTが分離したような気分だ。
ちなみにこのバンドを結成当初にいた元JUDAS PRIESTのドラムのレス・ビンクスは手首のけがで脱退した。
メンバーは以下のとおり。
ギター:K. K. ダウニング
ボーカル:ティム”リッパー”オーウェンズ
ベース:トニー・ニュートン
ギター:A. J. ミルズ
ドラム:ショーン・エルグ
曲紹介に移ろう。
1 Incarnation
短い語りのあるイントロ。
2 Hellfire Thunderbolt
イントロから雷鳴のようなギターのアームプレイ。そして疾走チューンへと展開する。王道の流れに脱帽だ。また曲がかっこいい。ティム”リッパー”オーウェンズのハイトーンも健在だ。なによりK. K. ダウニングが2021年に御年70歳になるとは思えない硬質なヘヴィメタルをやってくれた。ドラムがちょっとシンプルすぎないかってケチをつけることもできなくはないが、 K. K. ダウニングが10年ぶりにミュージシャンとして帰ってきてこのクオリティであれば、文句はあるまい。ロックTVのインタビューやライナーノーツによればこの曲の原形は”NOSTRADAMUS”(2008年リリース)時代にあったそうだ。
3 Sermons Of The Sinner
荘厳なイントロからドラムソロで始まり、雰囲気は超名曲の”Painkiller”である。ギターソロ、ベースソロもありバンドの代表曲にしようとする意気込みを感じる。中間にミドルテンポのパートがあるが、ここのティム”リッパー”オーウェンズの歌メロや歌い方も味があっていい。個人的にはスネアの音が曲に対して軽く聞こえるので、もっと重いほうがよかったのではと思う。
4 Sacerdote Y Diablo
疾走感のあるギターリフが気持ちいい。自然と頭を振ってしまう。ギターソロからツインリードギターソロの流れもかっこいい。タイトルはスペイン語で「司祭と悪魔」の意味。
5 Raise Your Fists
ミドルテンポでライブで盛り上がるコーラスを持つ曲。こういう曲をサラッとできてしまうところもかっこいいな。ライブで聴いたら絶対に両手の拳を突き上げて大合唱だろうな。
6 Brothers Of The Road
こちらもミドルテンポの曲。アメリカンマッスルカーやバイクで、広大なアメリカの道を優雅に翔けるそんな曲だ。味があってかっこいい。
7 Metal Through And Through
8分越えのスローでヘヴィなナンバー。ところどころ疾走パートがあり、緩急をつけている。タイトルの「徹底的にメタル」ってK. K. ダウニングの信条なのだろうな。
8 Wild And Free
ティム”リッパー”オーウェンズのアカペラから始まる疾走曲。サビが軽い感じもするが、ライブで拳を突き上げて盛り上がりそうなパートや、ミドルテンポのパートもあり、これはこれでいいかも。
9 Hail For The Priest
イントロこそスローテンポで始まるが、メインはアップテンポな曲。途中のギターメロは絶対にライブで「オーオー」って歌うやつだな。
10 Return Of The Sentinel
9分にも及ぶ本作のラストナンバー。重厚なミドルテンポの曲で、途中にはボーカルとアコギだけのパートもある。これはこれでいいのだけど、”The Sentinel”が超名曲であっただけに、比較してしまうとつらい。
KK’s PRIESTのポテンシャルの高さを発揮した良作だ。メタル然としていてかっこいい。K. K. ダウニング脱退以降のJUDAS PRIESTと比較して、管理人としてはKK’s PRIESTを推したい。これを受けて本家JUDAS PRIESTにも刺激があるといいね。
このKK’s PRIESTのアルバムがJUDAS PRIESTのすべてのアルバムの中で最高傑作かと聞かれたら、それはノーである。でも、ファンが望むものを提供していると思う。
10月1日の金曜日発売のアルバムっていうのもあったんだ。日本だと水曜日発売のイメージであった。
発売前の10曲中の4曲もYouTubeに公開していて、6曲のために購入するのかとケチ根性が出てしまった。しかし、4曲の出来を見て、「K. K. ダウニングが帰ってきた」とか「KK’s PRIESTの出来がよさそうだ」という流れにしたかったのだと理解もできる。K. K. ダウニングもアルバムの出来に満足し、早く聞いてほしかったのだろう。日本盤は歌詞カードのデザインがキレイだし、分厚い。またMasa Itoによるライナーノーツもある。6曲の出来や前述の理由で管理人としては買いであった。
ロックTVでは、K. K. ダウニングがもう次のアルバムの曲作りをしていると話していた。ひと仕事終えて、休みたいというのはなさそうだ。この人は仕事人なのだろう。次のアルバムも期待して待ちたいし、ぜひとも日本に来てライブしてほしいな。
過去のインタビュー記事やMasa Itoのライナーノーツにもあったけど、K. K. ダウニングはJUDAS PRIESTに戻りたい気持ちがすごく出ている。脱退も彼の意思によらないものであったようだが。その一方で起きてしまったものは戻らない。覆水盆に返らずだ。であれば、今のKK’s PRIESTで勝負し続けてほしいところだ。こんなにかっこいいアルバムを作って、発表したのだから。
別の見方をすれば、K. K. ダウニングは自分の感情に正直で、それを言葉にしてしまうのだろうな。言動の好き嫌いは別として、本心を言ってくれているのであれば付き合いやすいのかもしれない。
K. K. ダウニングが2011年にJUDAS PRIESTを脱退して、2021年にKK’s PRIESTとしてカムバックするまでの10年間がこのアルバムにどう影響したかはわからない。過去のマテリアルをどの程度このアルバムに使ったのか、それとも音楽業界以外の仕事をして(中には失敗もして)、苦労した中で生み出されたサウンドなのか。管理人としては、K. K. ダウニングは音楽以外をやってみたが、やはり自分には音楽がフィットする、特にJUDAS PRIESTの正統派メタルが性に合うと再認識した10年であったと思う。だから、この10年の軌跡は無駄ではなかったと思いたい。
ヘヴィメタルや日本人の感覚だと、ひとつを貫いて極めろみたいなところがある気がする。でも、海外だと転職や副業が盛んだと聞く。ひとつだけではなく、外を見る、ほかの視点で振り返るというメリットがありそうだ。K. K. ダウニングにとっての10年がそれのような気がする。
K. K. ダウニングをほめすぎ? 70歳にもなって、ファンが求めるヘヴィメタルを提供してくれるスーパーメタルマンには感謝しかない。強いて言えば、インタビューでもう少し大人な発言をしてほしい気もするが、それも含めて彼なのだろう。
コメント
[…] 2021/10/3 アルバム紹介記事はこちらから。https://riumetal.com/archives/kks-priest-sermons-of-the-sinner.html […]
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