トヨタハイブリッド車の第5世代を考える

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2022/8/29 文章表、グラフに誤りがあったため修正済み。

2022年1月より発売されたトヨタ自動車のミニバン、ノアとヴォクシーがフルモデルチェンジして発売された(90系)。トヨタが進めているTNGAに基づくプラットフォームとガソリンエンジン(2L)を採用している。ハイブリッドモデルは前モデル(80系)と同じ型式2ZR-FXEであるが、高出力・高効率化を果たしトヨタ・ハイブリッド・システム(THS)の第5世代となった。

THSについては常にプリウスで新世代に進化してきたが、今回は例外としてノア/ヴォクシーで進化させた。管理人がちょっと思い入れがあって、調べてみたら進化せざるを得ない状況が見えてきたので、今回説明したい。

タイトル画像はC-HRのエンジンルームである。

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THSの特徴

トヨタ・ハイブリッド・システムの特徴を簡単に記載しておく。

  1. シリーズ・パラレルハイブリッド
  2. 遊星歯車を用いてエンジン変速機能付きの動力分割機構
  3. 1997年から現在まで製造している実績

1つ目はエンジンで発電しモーターだけで走るシリーズハイブリッドとエンジンをサポートだけするパラレルハイブリッドの両方を切り替えて使える。制御が複雑となるが、それぞれの特徴のいいところだけを使えるので燃費はかなり向上する。

2つ目はモーターとエンジンの動力をどのように切り替えてタイヤに伝えるか、それが動力分割機構である。シリーズ・パラレルハイブリッドとしてはホンダのe:HEVや三菱のPHEVも同じであるが、その2つがクラッチを用いているのに対して、トヨタは遊星歯車を用いた。モーターとエンジンの動力を絶妙にタイヤに伝えたり、タイヤからモーターに伝えられるようになった。その結果、唯一無二のハイブリッドシステムとなり世界を圧倒した(欧米連合で遊星歯車の機構を複数備えたシステムを作ったことがあったが、現在はなくなっている)。

3つ目は世界初のハイブリッドカーとして1997年にデビューしながら、その完成度の高さから現在も使用している。もちろんシステムの構成部品を小型・軽量化、低摩擦、省電力化などを行い、確実に進化しているが、遊星歯車を用いたシリーズ・パラレルハイブリッドであるところは一切変化なし。これらは特許取得済みで、長年にわたり他社が使えないようにしていたが、2019年に無償公開した。

THS世代について

THS第5世代と言われても困ると思うので、簡単に書いておきたい。

第1世代(表記はTHS)
1997年に初代プリウスでデビュー。「21世紀に間に合いました。」がキャッチコピー。

第2世代(表記はTHS II)
2003年に2代目プリウスでデビュー。ハイブリッド・シナジー・ドライブのバッヂがつくようになる。

第3世代(表記はリダクション機構付きTHS II)
2009年の3代目プリウスでデビュー。システムの小型・軽量化によりアクアが登場し、トヨタのハイブリッドカーが爆発的に普及することとなった。

第4世代(表記はTHS II)
2015年の4代目プリウスでデビュー。

第5世代(表記はTHS II)
今回の2022年のノア/ヴォクシーでデビュー。

ハイブリッドエンジンの種類

今回は第5世代の唯一のエンジンである1.8Lの2ZR-FXEを特集するが、ほかの排気量も存在する。

1.5L 1NZ-FXE
トヨタのカローラアクシオ、カローラフィールダー、シエンタ。

1.5L M15A-FXE
トヨタのヤリス、ヤリスクロス、アクア。

2.0L M20A-FXS
レクサスのUXのみ。

2.5L 2AR-FSE
レクサスのIS、RC。

2.5L 2AR-FXE
トヨタのアルファード、ヴェルファイア。

2.5L A25A-FXS
レクサスのES、NX、トヨタのRAV4、カムリ、クラウン、ハリアー。

3.5L 2GR-FXS
レクサスのRXのみ。

3.5L 8GR-FXS
レクサスのLC、LS、トヨタのクラウン。

5.0L 2UR-FSE
トヨタのセンチュリーのみ。

ちなみに1.2LのWA-VEXはダイハツ製のシリーズハイブリッドエンジンで、THSとは別物である。

22年5月時点。

THS 第5世代について

本題の1.8Lのハイブリッドエンジンについて見ていこう。2ZR-FXEは現在販売中の車種は第3世代から第5世代が入り混じっている。

第3世代は3代目プリウスを皮切りに、80系のノア/ヴォクシー、オーリス、プリウスαなどで使われていたが、現在購入できるのはレクサスのCTのみである。CTは22年10月で販売終了が決まっている。

第4世代は50系プリウス、C-HR、カローラ、カローラクロス、カローラスポーツ、カローラツーリング。

第5世代は90系のノア/ヴォクシーのみ。

第3世代から第5世代までの車種とそれぞれのデータを表にしてみる。

1.8L 2ZR-FXEの車種とデータの表

ひとつお断りがある。燃費について、3種類表記があるが国土交通省の方法変更によるものである。

10・15モード:2011年3月まで

JC08モード:2011年4月~2017年夏まで

WLTCモード:2017年夏~

測定方法の詳細は省略する。気になる方は調べてみてほしい。

第4世代以降はWLTCモードのみとなるため、第3世代の10・15モードやJC08モードをWLTCモードに換算する必要がある。ネットで調べるとJC08は10・15モードの85%程度とあるので採用しているが、参考値と考えてほしい。WLTCモードはトヨタのシエンタの2018年9月カタログよりWLTCで22.8km/L、JC08で28.8km/Lより比率79%を採用した。黄色塗りつぶしが換算した数値である。

表を眺めていると、燃費の表記が変わった以外に、電池の種類がニッケル水素電池からリチウムイオン電池に変わって、電気容量も小さくなっていることがわかる。たしかトヨタは安全性の高いニッケル水素電池を主力として使っていたが、第4世代ではリチウムイオン電池に変更している。トヨタの安全性の基準のめどが立ったというところか。パワーの出方がリチウムイオン電池がよいため、小さい電気容量で済むということだろう。

THS II 世代別の車重と燃費(WLTCモード)の関係

表の車重と燃費の関係をグラフにしてみた。第3世代は青色で1300~1600kgの車重に対応しているが、やはり車重が大きいほど燃費が下がる。第4世代は赤色で1300~1450kgの車重までのラインアップとなっている。

ここがポイントである。第4世代は車重が大きいほど燃費があったする傾向が第3世代よりも強い(直線の傾きが第3世代よりも第4世代のほうが大きい)。この第4世代でノア/ヴォクシーの車重1600kgオーバーとなると、推定値で15km/Lとなる。このため、22年の新型ノア/ヴォクシー(90系)は第4世代を使えず、第5世代に進化する必要があったのだ!

第5世代を緑色で描くと、第4世代よりも第3世代よりも燃費がよい。新開発した効果が出ているといえるだろう。今後の展開としては車重が1500kg未満は第4世代、1500kg以上は第5世代となるのではないかと推測する。

THS II 同一車種での進化

最後に同一車種での世代変化を見ていこう。プリウスは30系が第3世代、50系が第4世代である。ノア/ヴォクシーは80系が第3世代、90系が第5世代である。

表からフルモデルチェンジ後は燃費がよくなっていること、車重が増えていることがわかる。安全装備や便利機能が追加され新型車ほど重くなる傾向があるが、それでも燃費を向上させるところが技術の見せ所だろう。トヨタのすごさだ。

まとめ

今回、ノア/ヴォクシーのハイブリッドが第5世代になったというニュースが気になったので、トヨタのハイブリッドカーのうち1.8Lのモデルを調査した。第4世代では車重の大きいノア/ヴォクシーの燃費が悪くなる可能性があることがデータよりわかった。そのため、トヨタはハイブリッドを第5世代に進化させてノア/ヴォクシーに搭載したと思われる。

また、今後のハイブリッド車の世代のすみわけとして、車重が1500kg未満は第4世代、1500kg以上は第5世代となりそうなこともわかった。

あくまでデータから見た推測であるため、実際のところは今後発売される新車の詳細情報を確認したい。

第5世代の進化の内容はこちらが詳しいので、気になった方は参照してほしい。マニアックで楽しい記事だ。

新型ノア/ヴォクシー 全面刷新! 第5世代に進化したTHS (トヨタ・ハイブリッドシステム)何がスゴイ?どこが新しい?
トヨタのシリーズ・パラレルハイブリッドシステム「THS」がまた進化した。新型ノア・ヴォクシーから投入されたハイブリッドシステムは、トヨタとして第5世代だという。どこがどのようにどのくらい進化したのか?

今回は1.8Lのエンジンのハイブリッドを調べたが、1.5Lのハイブリッド車の調査は下記の記事を参照してほしい。

2.5Lについては下記の記事で紹介しているので参照してほしい。

’22年10月にカローラシリーズのハイブリッドが第5世代になった。下記の記事で紹介しているので参照してほしい。

’23年1月に発売となった新型プリウスも第5世代となった。下記の記事で紹介しているので参照してほしい。

’23/10にカローラクロスもマイナーチェンジし、THS第5世代になった。性能確認はこちら。

データ出典

現行モデル

トヨタ自動車WEBサイト
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