元JUDAS PRIESTのギターであるK. K. ダウニングとボーカルであるティム”リッパー”オーウェンズが在籍するKK’s PRIESTの2023年に発表された2ndアルバム。デビューアルバムから2年ぶりとなる。
全体として
これは文句なしの正統派メタル。80年代のメタルを現代のサウンドプロデュースで作ったらこうなる、といういい見本だ。
しかしながら、前作と比べて収録時間が40分とコンパクト。サウンドも重厚だけど聴きごたえはあっさり。
ティム”リッパー”オーウェンズのボーカルは、ハイトーン一辺倒ではなく、中低音も活用し、少し表現力が増した印象だ。
ヤコブ・ハンセンのミキシングとマスタリングが重厚なサウンドを生み出す。ドラムの質感向上。前回気になったフィルの使いまわしもなくなった。
バンドメンバー
前作とメンバーは同じ。一体感やバンドサウンドが強化された。
ギター:K. K. ダウニング
ボーカル:ティム”リッパー”オーウェンズ
ベース:トニー・ニュートン
ギター:A. J. ミルズ
ドラム:ショーン・エルグ
収録曲
01 Sons Of The Sentinel
前作のラストナンバーである”Return Of The Sentinel”に続く”Sentinel”続編である。元はJUDAS PRIESTの名曲”The Sentinel”に由来する。復讐に始まり、前作が「帰還」(すなわち死)であり、今作はその「息子たち」である。そのストーリー性さえ、楽しくなる。
サウンドも疾走曲で、ギターソロバトルもあり、ザクザクリフに乗って「We are the sons」と歌うところはまさに行進しているようだ。
02 Strike Of The Viper
続いても疾走曲。「Strike!」の掛け声がライブ映えする。中間のサビ裏のギターピロピロもいい。
03 Reap The Whirlwind
怒りにも似た感情の疾走曲。曲名は自業自得、自分が悪い行いをして罰を受けるの意味。もしかして、K. K. ダウニングがJUDAS PRIESTを脱退したこと、このバンドをやっていることを後悔しているのか?
04 One More Shot At Glory
これもJUDAS PRIESTの”One Shot At Glory”の続編。前の曲で後悔と書いたが、そんなことは全くなさそうで安心した(笑)。
「栄光への追撃」と言ったところか。
05 Hymn 66
語りから始まる。立て続けの疾走曲から、ミドルテンポのヘヴィなナンバーになる。最後の畳みかけるようなボーカルはお見事。
06 The Sinner Rides Again
ミドルテンポのタイトルチューン。ツインリードギターのイントロから、サビのハイトーンスクリームまで力強い。
07 Keeper Of The Graves
ローテンポから始まり疾走するナンバーだが、これがまた味のあるクワイア、ボーカルメロディで本作の聴きどころ的なナンバーである。”Keeper”(守護者)という単語やそれに伴う楽曲がかっこいい。
08 Pledge Your Souls
ミドルテンポの力強いナンバー。タイトルは進撃の巨人で言うところの「心臓を捧げよ」である。
09 Wash Away Your Sins
タイトルは罪を洗い流す、禊である。ボーカルとアコギのみで宣告が始まり、バンドサウンドで禊が始まる。
ボーナストラックは収録曲のインストゥルメンタルである。
アルバム全体
前作が「罪人の説教」という題名で、”PRIEST”と言う名前を使ってK. K. ダウニングがヘヴィメタルをまだまだやれることを証明した。
その後、JUDAS PRIESTのロックの殿堂の式典でK. K. ダウニングを含む7人でプレイした。素晴らしいパフォーマンスであった一方で、これは一夜限りの共演であった。
「罪人の再始動」と題された本作は、JUDAS PRIESTに復帰が叶わなかったK. K. ダウニングが”PRIEST”の名前を冠したバンドで本気でやっていく覚悟を見せたアルバムだろう。インタビューでJUDAS PRIESTに戻りたいという弱音(?)を吐くこともなくなった。男、サウンドで語る的でかっこいい。
楽曲もこれぞヘヴィメタルのお手本というべきものだし、サウンドプロダクションも一級品。あとは聴くものすべてを惹きつけるマジックのあるキラーチューンがあればというところか。
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