VIRGO (MATOS / PAETH) アルバム紹介

Review
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ブラジルのメロディック・スピードメタルバンドANGRAの中心人物だったアンドレ・マトスがANGRA脱退後に初めて発表した音源。2001年に発表され、元HEAVENS GATEのサシャ・ピートとの共作である。

二人はANGRAのデビューアルバム”ANGELS CRY”のときに意気投合し3曲程度を書いたが、お互い忙しくてタイミングが合わなかったようだ。今回奇しくも1999年に同時にアンドレ・マトスのANGRA脱退、サシャ・ピートのHEAVENS GATE解散を経てようやく実現した。

ANGRAのようなメロディック・スピードメタルを期待すると肩透かし食う。ANGRAでもHEAVENS GATEでもなく、二人の音楽ルーツにあるものから自由にロックを表現したアルバムである。今、こうして聞くと確かによさがわかる。しかし、当時は二人にメタルを求めていたため、このアルバムのよさが理解できなかった。長い間、押し入れに眠っていた。

このプロジェクトはサシャ・ピートがメインで、アンドレ・マトスが参加という形のようだ。#1、#2、#4、#8、#11がサシャ・ピート、#3、#5、#6、#7がアンドレ・マトス、#9、#10が二人の共作である。ボーカルがアンドレ・マトス、ギター・ベースがサシャ・ピート、ドラムがロバート・ヒューネケ(元HEAVENS GATEのベース、ベースからドラムに転向したようだ)、キーボードがミロである。プロデュースはサシャ・ピートとミロで、メロディック・スピードメタルの中では有名どころ。

静かなイントロからアンドレ・マトスのアカペラ、ギターソロと始まる#1はまさに二人のおかれている現状とこれからを歌っているようだ。少しヘヴィで面白いサビメロを持つ#2、明るい曲調のロックナンバー#4、クワイアの入ったバラード#5、イントロのテンションが上がるサウンドはハーモニカ?のポップなチューン#6、本作唯一の疾走チューンでギターが気持ちよい#9など聴きどころが多い。

プロジェクト名について言及はないが、二人ともおとめ座(VIRGO)だからなのかな。アンドレ・マトスが9月14日、サシャ・ピートが9月9日生まれ、おとめ座は8月23日~9月22日。ちなみにジャケットの左がアンドレ・マトスで、右がサシャ・ピートである。ちょうどMATOS / PAETHの名前の通りに配置されている。

アンドレ・マトスがこのアルバムを手掛けているときに、ANGRAは新しいメンバーを集めて2001年に”REBIRTH”を発表した。これが起死回生の傑作で、鬼才アンドレ・マトス不在のANGRAの再生を決定づけた。そこから遅れてアンドレ・マトスのニューバンドSHAMANのデビューアルバム”RITUAL”が2002年に発表した。こちらも良作であるのだが、ANGRAの鮮烈な復活劇の後では印象がかすんでしまった。もしアンドレ・マトスがこのVIRGOに着手せず、SHAMANのデビューアルバムが新生ANGRAのアルバムよりも前に出ていたら、その後の音楽人生も違ったものになっていたかもしれない。ANGRA脱退後のアンドレ・マトスの世間の印象がよくないのはこの辺から来ているように思えてならない。

アンドレ・マトスのドキュメンタリー映画が製作されている。そこでアンドレ・マトスの再評価を期待すると同時に、ヘヴィメタルから少し離れてこんなアルバムを作っていたのだということも知ってもらえるとうれしい。

このプロジェクトはアルバム1枚で終わっている。アンドレ・マトスが2019年に亡くなったが、サシャ・ピートがメインのプロジェクトだから継続することもできるだろうが。サシャ・ピートはプロデュース以外にもマルチに活躍している。2021年にはEPICAのアルバム”OMEGA”で楽曲提供した。

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