STRATOVARIUS – “SURVIVE” アルバム紹介

Review
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フィンランドのメロディック・スピードメタルバンドSTRATOVARIUS(ストラトヴァリウス)が7年ぶりの16枚目のアルバム”SURVIVE”をリリースした。

2019年ごろからアルバム制作に入ったが、パンデミックによってスタジオへの往来ができず、停滞してしたようだ。その後2021年に再開して2022年に発表に至った。

そのほかに曲作りに関しては、メインソングライターであるボーカルのティモ・コティペルト、キーボードのイェンス・ヨハンソン、ギターのマティアス・クピアイネンがそれぞれ持ち寄った曲を何度も何度もアレンジしていったという。演奏面だけではなく、特にボーカルの部分についてティモ・コティペルトの得意とする声域や好きな歌いまわしのアレンジにこだわったようだ。

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STRATOVARIUSの変遷

STRATOVARIUSは少し特殊な経歴を持つバンドだ。大きく3つの時期に分けられる。初期と黄金期と現在である。

初期は1982年に結成され、のちの黄金期の立役者であるギターのティモ・トルキがボーカル兼任で1985年に加入した。1993年までにアルバム3枚を発表した。

黄金期は1994年に専任ボーカルのティモ・コティペルト加入から始まる。翌年の1995年にキーボードのイェンス・ヨハンソンとドラムのヨルグ・マイケルというメタル界の著名なミュージシャンを獲得し、バンドの人気に火が付いた。この時にバンドの結成当初からいたオリジナルメンバーは排除され、ギターのティモ・トルキがリーダーとなった。

黄金期の終焉は2008年のリーダーでギターのティモ・トルキの脱退であった。ここに至るまでに2003年にはボーカルのティモ・コティペルトとドラムのヨルグ・マイケルがティモ・トルキとの確執で脱退し、別メンバーを入れて活動しようとするが批判が多く、最終的には2005年に2人が復帰するということがあった。2005年にティモ・トルキと長い付き合いのあったベースのヤリ・カイヌライネンが脱退し、ティモ・コティペルトのソロバンドのメンバーであるラウリ・ポラーが加入した。2007年にレコーディングしたアルバムは白紙にして、2008年にティモ・トルキのプロジェクトであるREVOLUTION RENAISSANCE名義でリリースしてしまう。このタイミングでティモ・トルキはSTRATOVARIUSの解散を宣言するが、残った4人のメンバーは存続を表明し、ギターのマティアス・クピアイネンが加入した。

現在の体制は2008年のマティアス加入より始まる。バンドのロゴを一新し、アルバムのタイトルは英語7文字、サウンドもプログレッシブな要素が入った。2011年にドラムのヨルグ・マイケルが脱退し、2012年にロルフ・ピルヴが加入した。2009年より2015年まで2年に1枚というハイペースでアルバムをリリースしてきた。

ニューアルバムについて

イェンス・ヨハンソンの言葉を借りれば、ギターのマティアス・クピアイネンはワーカホリックで、それで2年に1枚のハイペースでアルバムをリリースできた。今回のアルバムは主要3メンバーでアレンジを練ったという。またアルバムタイトルや歌詞もこだわり抜いた。

この”SURVIVE”(生き延びる)にはバンドが稀有な歴史をたどりつつも現在まで生き延びたことと、自然災害やパンデミックなどの大変な世界情勢の中でも人々が生き延びていることを示しているという。アルバム完成後にウクライナのことがあり、ますますこの言葉を意識してしまう。

アルバムはというと、現在のSTRATOVARIUSの最高傑作と言っても過言ではない。テクニカルで才能のあるミュージシャンが集まって、奇跡的なバランスで作ってきたこれまでのアルバムに対して、今回はSTRATOVARIUSの特徴を再確認し、研ぎ澄ましてきた印象である。特徴とはずばりボーカルのティモ・コティペルトの歌だ。すべての曲の中心に彼の歌メロがいる。そしてよいメロディに仕立て上げ、さらに彼が歌いやすい音域にすることで、生き生きとしていて美しいボーカルラインがある。技巧集団の楽器隊は各曲で確かに存在感はあるが、ボーカルラインを際立たせることに注力している。

ティモ・トルキ時代のアルバムが好きだし、彼の作るメロディやクラシカルなフレーズは大好物である。彼がいなくなったあと離れた人もいるだろう。しかし、このアルバムは現在のSTRATOVARIUSが放つ極上のメロディをティモ・コティペルトが歌い上げ、楽器隊が高い技術力に裏付けされた演奏で盛り上げる強力なアルバムだ。

  1. Survive
    ラウド系のゴリゴリのギターリフで始まるが、オーケストラヒットの後からのAメロでティモの歌メロを聴けば安心できる。Bメロはのびやか、サビもキャッチーだ。「Only the strong will survive」はとても力強いメッセージだ。
  2. Demand
    ANGRAの”Angels And Demons”のようなテクニカルでノリノリのイントロ。サビを聴けば、こちらもSTRATOVARIUSらしいキャッチーだ。ティモ・トルキのメロとは違った、でも一度聴けば覚えられるそんなサウンドだ。間奏のキーボードがいろいろな音色を使い、複雑なんだけどかっこいい。イェンス・ヨハンソンはベテランの年齢になっても型にはまらず、新しいことに挑戦し続ける姿勢がかっこいい。
  3. Broken
    ミドルテンポでティモの歌がメインなんだけど、裏のアルペジオ風なキーボードであったり、ヘヴィなギターリフ、間奏のテクニカルな(ティモ・トルキのクラシカルなものとは異なる)ギターソロなど聴きどころの多い曲だ。展開が複雑でプログレッシブだけど、それをさらっと聞かせてしまうのが今のSTRATOVARIUSの魅力だと思う。
  4. Firefly
    サビスタートのキャッチーな曲。黄金期の”Hunting High And Low”に対する現在の曲になりえるかもしれない。ノリがよいが、はかないメロの曲だ。
  5. We Are Not Alone
    まるでBEAST IN BLACKのような80年代のイケイケ、キラキラキーボードのイントロで始まる。ティモの中音域からほどほどの高音域まででメロディが作られているのも関わらず、とても魅力的な曲に仕上がっている。こういう曲、好きだ。
  6. Frozen In Time
    物静かなクワイアから始まる。荘厳なリフのミドルテンポの曲。サビメロが充実しているし、ほかのパートも演奏で見せるなど7分弱と長尺であるが飽きさせないだけの魅力がある。
  7. World On Fire
    タイトルをコールして始まる。雰囲気は”Deep Unknown”なイントロだ。疾走のAメロ、ためのあるBメロ、広がりを持ったサビメロ。テクニカルだけどわかりやすいメロディを持つ今の彼らの十八番的な曲だ。
  8. Glory Days
    ハイライトはこの曲だ。疾走するAメロ、ためがあり、思わず拳を突き上げたくなるBメロ、疾走するサビメロ。コーラスワークも最高。間奏の終わりはエンドロールのようなミドルテンポ部分もある。ちょっと感動的でさえある。
  9. Breakaway
    アルバム唯一のバラード。ボーカルとギターだけ、ボーカルとキーボードだけの静かなパートがあり、ティモの歌声を堪能できる。そしてベースやドラムが入ってロックバラード調へ移行する。
  10. Before The Fall
    静かに始まり、重厚なリフであるため、大曲を予感させる。充実した内容で、これがラストでもいいぐらいだ。
  11. Voice Of Thunder
    11分越えの大曲。Aメロ、Bメロ、サビという基本展開でできているため聴きやすい。中間パートに現在の体制では珍しいクラシカルなフレーズがあり、管理人としてはちょっとうれしい。ラストはテンポを落として、荘厳なコーラスの中、泣きギターが炸裂する。

ライブCD

ライブでの満足度の高いSTRATOVARIUSの熱狂がしっかり収められている。ティモの現在の音域からすると昔の曲はつらそうだ。だからこそのこのニューアルバムにつながるのだと思うと感慨深い。

MV

Stratovarius ‘Survive’
Stratovarius ‘Broken’
Stratovarius ‘Firefly’
Stratovarius ‘World On Fire’

まとめ

結局のところどうなのかというと、バンドの最高傑作でよいと思う。

ティモ・トルキ時代の”VISIONS”(1996年)こそ最高傑作で、次点として現在のバンド体制での”NEMESIS”(2013年)と思っていた。メロディの充実さ、捨て曲のなさ、バンドの一体感。どれをとっても素晴らしい。

いろいろ書きたくなるほど、テンションの上がるアルバムだ。


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