ドイツのメロディック・スピードメタルバンドの祖、HELLOWEEN(ハロウィン)の16枚目のアルバムである。前作より6年が経過したが、その間に起きた奇跡を思うと、あっという間だった。マイケル・キスク、カイ・ハンセンが合流してワールドツアーを開催した。そしてツアーだけではなく、このアルバムまで作ってしまったのだ!
7人のメンバーをおさらいしておこう。
ボーカル:アンディ・デリス
ボーカル:マイケル・キスク
ギター・ボーカル:カイ・ハンセン
ギター:マイケル・ヴァイカート
ベース:マーカス・グロスコフ
ギター:サシャ・ゲルストナー
ドラム:ダニ・ルブレ
今作はオリジナル・ドラマーであるインゴ・シュヴィヒテンバーグ(故人)のドラムキットを使用した。気合の入れ方が違う。アルバムタイトルは1985年のミニアルバムと同じでセルフタイトルである。36年の時を経て再び同じ名前でアルバムを出したのだ。
- Out For The Glory
ヴァイカートの曲でキスクのハイトーンが乗れば、そこには説明不要のHELLOWEENがある。7人のHELLOWEENで「栄光に向かってこぶしを突き上げろ!」だ。 - Fear Of The Fallen
アンディらしい曲で、アルバムのハイライトでもある。HELLOWEENの黄金時代と言われた守護神伝にこそアンディは不在だが、その後のHELLOWEENを支えてのは彼のボーカルであり、彼の楽曲たちであることを再認識させられる力作だ。 - Best Time
イントロでガッツポーズした、サシャとアンディの共作。キスクのハイトーンの後でくるカイのフレーズがかっこいい。このアルバムでカイのボーカルがアクセント的な使われ方しかしていない中、歌パートが多くてよい。名曲として推薦したい。 - Mass Pollution
アンディのアグレッシブさが出た曲。ソングライティングの幅広さもアンディの強力なアイデンティティのひとつだ。 - Angels
サシャによる複雑な構成の曲。それでいてメロディがよいから、すっと頭に入ってくる。 - Rise Without Chains
アンディによる曲。まくしたてるAメロに、のびやかなBメロ、哀愁感の漂うサビメロとなかなかよい感じ。 - Indestructible
マーカスによる曲。リフといい歌詞といいメロといい、本当にいい曲書くなぁ。キスクのサビでの歌声がすばらしい。 - Robot King
ヴァイカートによる痛快な曲。”Kings Will Be Kings”もそうだけど、面白い歌詞を書くよね。 - Cyanide
アンディによる曲。アンディ時代のHELLOWEENらしい楽曲だ。 - Down In The Dumps
ヴァイカートによる曲。疾走感のあるナンバーだ。 - Orbit
カイによる短いインスト。壮大な#12に続くための小休止。 - Skyfall
カイによる超大作。先に公開されたショートバージョンのMVを聴いていたが、アルバムで聴くとさらに新しいパートがあり、よいメロがあって感動した。ショートバージョンにしかないフレーズもあった。展開、決めフレーズ、メロがよい。12分があっという間だった。できれば、もっとカイの曲をHELLOWEENで聞きたかった。
初回生産限定盤のみ附属のCD
- Golden Times
サシャの曲。キスクがメインボーカルでなかなかよい。 - Save My Hide
アンディらしい実験的な曲だ。少しテンションが高すぎて本編から外れたか。 - Pumpkins United
アンディ、カイ、ヴァイカート共作。ボーナスCD付の初回生産限定盤を買う理由ってこの曲で決まりでしょ。本編に入れても差し支えないクオリティだけど、ボーナストラックにしてしまえるだけの高品質な曲を作れるバンドも稀有だと思う。 - We Are Real
マーカス作曲。Aメロをカイが歌っているので、それだけでよし。得した気分だ。
7人のHELLOWEENを体感するという意味で、このアルバムを購入した価値はある。アルバムの出来でいうと、#3″Best Time”や#12″Skyfall”がかなりよいものの、前作の1曲目から5曲目までの良質なメロの洪水を超えていない。ただし、最初にも書いたとおり、マイケル・キスクとカイ・ハンセンが合流しアルバムを作っているだけでよいのである。これで守護神伝の第1章、第2章のような歴史的名盤を作れというほうが酷である。アンディ時代のHELLOWEENサウンドにマイケル・キスクとカイ・ハンセンが参加しているという感じだ。
でも、信じている。このバンドはきっと、守護神伝の第3章を作ってそれが歴史的名盤になることを。そのときのために今回のアルバムはセルフタイトルなのだと。
7/3追記:こんなことをファーストインプレッション的に書いたが、聞きこむときめ細かなギターフレーズ、ボーカルパートの割り振り、タイミングを見計らって主張するベースや温かい音作りのドラムなどの作りこみ高さに圧倒される。そして中毒性が増してきて、HELLOWEENのほかのアルバムに浮気してもまたこのアルバムに戻ってきてしまう。円熟したベテランだからこそできる、深みのあるアルバムである。あえて文句を言うなら、もっとカイの曲が聴きたいものだ!
来日してライブを体感したい一番のバンドだ。
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