ヴィジュアル系ロックバンドPIERROT、Angeloのボーカルのキリトの5枚目のソロアルバム。2024年11月13日発売。
Angelo時代から続く、年1枚のペースでアルバムを発表し続けている。最近はCDアルバムを出しても売れず、昔の曲をライブでやって、グッズでビジネスをする流れがあるが、彼にはそんなことお構いなしのようだ。
管理人的には新譜が毎年の楽しみであり、非常にありがたい。内容を見ていこう。
ジャケットは十字架(CROSS)にはりつけられたキリストのように見える。
レコーディングメンバー
ギター:JOHN
ベース:Chiyu(SLAPSLY)
ドラム:Hiroki(C-GATE)
リズム隊が変更された。過去2作ではベース:MASA、ドラム:Allenであった。この変更で、サウンドの変化が出た。
曲紹介
全曲キリトの作詞作曲。
01.CROSS OVER THE WORLD LINE
怪しげなSEから、ヘヴィなギターリフがメインのミドルテンポの曲。Aメロの語りやラップに近い歌い方は賛否ありそうだが、イントロのSEはBメロで使っているのは好印象。またサビのメロディがいいし、歌声がいつにもまして優しい。
ここでのCROSSは、交差の意味だ。世界線を越えていく者の歌。
02.Golgotha
ギターリフはこじんまりとしているが、歌メロがいいのと特にベースがとても動いているのが印象的。アウトロの歌の裏のベースラインが神がかっている。
曲名のゴルゴタとはキリストがはりつけにされたエルサレムの丘の名前。別名、されこうべの場所。
03.VENUS
やさしさにあふれたポップチューン。メロディメーカーのキリトが本領発揮した感じだ。そして、動くベースラインに、温かみのあるドラムサウンド。このレコーディングメンバーだから、生まれた曲と言えそうだ。
美の女神というタイトルだが、なかなか怖い歌詞になっている。世界を壊してしまう。
04.KINGDOM OF THE NEW SEEDS
オルタナティブ・ロックな雰囲気でシャウトで英語歌詞の部分もあるが、日本語歌詞が大半でサビメロがいいのがすばらしい。またベースラインがいい味を出している。
狂気の新種を生み出すために、神に作られた複数体(異教徒、ウイルスと呼ばれるようなもの)の話。
05.Document
サビのスネアの連打が印象的なヘヴィパートと疾走パートを持つナンバー。歌い方も荒々しい。
歌詞はわからなかった。主役は誰で、君とは誰なのか。
06.月の残像
キリトのバラード。今回は何と言っても、ボーカルラインの裏でサポートするベースラインが、もう一人のボーカルかのごとく歌うようである点がいい。その一方で、ギターソロはちょっと物足りない。アウトロのベースラインも聴きどころ。
この歌詞もわからなかった。「誰もいない丘」ににやりとした。
07.瓦礫の花
先行MVで公開されていた楽曲。バラードの次に、メッセージ性の強いキャッチーが楽曲をつなげるのも、Angeloの後期やキリトソロの3rd、4thアルバムの流れだ。
5曲目~7曲目の主役と君はここで一緒になる。
08.TIME AXIS
リフやAメロはラウドロックっぽいが、サビになると耳を弾く歌メロに、歌うようなベースラインが入る。このパターンが気持ちいい。J-POP的なアプローチと言われてしまうかもしれないが、Chiyuのベースが入ったおかげで新しいキリトのサウンドになった。
歌詞は、物質と反物質(これが主役と君?)が対消滅して、時間軸が並行になる。つまり、世界線が分岐するようだ。でも互いに行き来して、進化していく。
09.COMPLETE
ザクザクとしたギターサウンドで、ミドルテンポの曲。サビではシャウトとクリーンボイスを使い分けていて、耳に残る。
歌詞は破壊したのちの再生を成し遂げるというもの。
10.A NEW BIBLE
ドラムのフレーズから始まり、Angeloの”A new story”を思い出した。タイトルも似ている。サビのリズムがえぐいが、ライブでベースとドラムの合わせるところは見どころになりそうだ。
サビの歌詞はイカロスの翼なのかな。ここまで歴史、世代を重ねてきたのだけど、まさかの時間を超えて最初に戻る。戻って、始まりのその地点から新種の起源として偉大な物語を描く。これは物語のスタート的な歌詞だ。
管理人のおすすめ:
03.VENUS、04.KINGDOM OF THE NEW SEEDS、07.瓦礫の花
全体
歌メロの充実。やさしい歌声。これはキリトのソロの1st、2ndアルバムの時代に通じるものがあり、管理人としては喜ばしい。
ラウドなパートでも、とげとげしさがないのはサウンドに丸みや温かみがあるから、そういう印象になるかも。ベースラインがすばらしい。
前作にもまして日本語歌詞の量が増えた。
文句をつけるなら、10曲で42分というのは短い。もっと聴きたくなる。Angelo時代も10曲でこだわりがあった。前作、前々作が10曲以上であったのは、ソロで演奏する曲数が足りなかったからというのが大きいのだろう。
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