究極のエコカーとは HEV vs. BEV vs. FCEV

CAR
広告

車(エコカー)の種類が増えてきた。
これまでは軽自動車、ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車(HEV)で、
共通で性能を比較する基準として燃費(燃料消費量)があった。
燃料1Lで何km走れるか、数字が大きいほどエコというものであった。

しかし、今は電気自動車(BEV)があるし、燃料電池自動車(水素で走る車、FCEV)もある。
トヨタ自動車のカタログのスペック表から持ってきたデータを下記の表に示す。

HEVは燃費の表示があるが、BEVとFCEVは燃費の表示がなく、これまでと表記が異なる。
つまり、共通で性能を比較する基準がない
結局、エコカーはどれがよいかわからない。

ということで、今回はHEV、BEV、FCEVで共通の性能を比較する基準を作ってみよう。

ここでエコカーとはCO2排出量やコスパとは異なり、ある基準で測定した性能で比較するものとする。CO2排出量ではガソリンが多いし、バイオ燃料だとどうだとか、発電方法、水素の製造方法に依存してしまう。
コスパも、車両価格、補助金、燃料代金が変動するため。
車の性能や基本的な物性値などで考えたい。

広告

航続距離

BEVとFCEVはよく1回の充電(水素充填)航続距離で語られる。
そこで、HEVも航続距離で表してみよう。

ちなみにFCEVはカタログのスペック表では航続距離の表記がないし、
記載内容では計算もできなかったことをここに記しておく。
トヨタの別のページで、水素量が5.6kgであり、航続距離は約850kmとある。
確かに計算するとその値が出てきた。
スペック表がわかりにくい点も、燃料電池自動車はまだ発展途上と言えそうだ。

航続距離で言えば、HEV、FCEV、BEVの順番になる。HEVはBEVの実に2倍となる。
このあたりがHEVで航続距離を気にすることがなく乗ることができていたのに対して、
BEVでしきりに航続距離の話題になる所以だろう。

PR

走行効率

航続距離が出たところで、どのくらいのエネルギー源(ガソリン、電気、水素)を
使って走ったかが気になった。エコカーとは少ないエネルギーで長く走れる車のことである。
電気のエネルギー量の単位であるkWhで、ガソリンと水素を合わせた。
航続距離を使用エネルギー量で割った値、走行効率km/kWhとした。
つまり数字が大きいほど効率がよいということになる。

走行効率はBEV、FCEV、HEVの順番になる。BEVはHEVの3倍、FCEVもHEVの2倍となる。
BEVが効率がよいと言われるのはこの点であろう。

走行効率はBEVがHEVの3倍よいのに、どうして航続距離はBEVはHEVの半分と短くなるのか。

エネルギー密度

これまでガソリン、電気、水素のエネルギーで見てきた。車に搭載するという観点から、エネルギー密度(貯蔵のしやすさ)で見る必要がある。つまり、ある体積からどのくらいのエネルギーが出るか、ある質量からどのくらいのエネルギーが出るかということである。数値が大きいほど小さい、軽いものから大きなエネルギーが出る。

表にガソリン、電気(電気をためるものは電池であり、ここでは現在の主流であるリチウムイオン電池)、水素(MIRAIで使われている70MPaでの値)のエネルギー密度を出した。

質量エネルギー密度は、水素、ガソリン、電池の順番になる。水素は電池の200倍、ガソリンは電池の60倍である。

体積エネルギー密度は、ガソリン、水素、電池の順番になる。ガソリンは電池の20倍、水素は電池の2倍である。

まとめ

ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車を比較する基準を探りながら、究極のエコカーとはどれなのか検討してみた。

比較しやすいように全ラインアップを保有するトヨタ自動車の車種を用いた。

基準として航続距離で見ると、ハイブリッド車、燃料電池自動車、電気自動車の順番になる。

基準として走行効率(航続距離を使用するエネルギー量で割る)で見ると、電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド車の順番になる。

走行効率が電気自動車はよいのに、航続距離は一番悪い理由を探るために、ガソリン、電池、水素でエネルギー密度を調べた。その結果、ガソリンと水素は電池よりもエネルギー密度が高いことがわかった。

PR

究極のエコカーとは。走行効率で見れば、電気自動車である。ハイブリッド車はエンジンの熱効率が40%以下であることが原因であると考えられる。燃料電池自動車も水素と酸素を反応させて、電気にしている変換効率が原因であると考えられる。

しかし、エネルギー源(ガソリン、電池、水素)の質量や体積あたりの発生させるエネルギーの大きさで見るとガソリンや水素は電池と比べて非常に大きい。

比較する基準を作る難しさを感じたし、究極のエコカーとはCO2やコスパという意味以外で語ろうとすると、これであると1つに決めることは難しい。

1つ見えたことがある。効率最強の電気自動車の電池のエネルギー密度をガソリン(=エネルギー密度最強)並みにすることができると、究極のエコカーが出来上がる。電気自動車は価格が高いから電池を安くする意味で研究開発が叫ばれている面もあるが、1つの重要なファクターは上記のエネルギー密度だろう。物理法則的にガソリンのエネルギー密度同等の電池が存在できるのかわからないが、理論を構築できたり、実現・製造することができたらノーベル賞ものだろう。

ちなみに、原子力発電のウランは1%の濃縮度で最大10000MWd/tとなる(日本原子力研究開発機構の資料より)。上述のガソリンのエネルギー密度12,800 Wh/kgと単位をそろえると、ウランのエネルギー密度は240,000,000 Wh/kgとなる。ガソリンの20,000倍である。最強のエネルギー源はウランかもしれない。もちろん原子炉の小型化、安全性や放射性廃棄物の処理など課題も多いのだろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました