イギリスのメタルゴッドと称されるヘヴィメタルバンド、JUDAS PRIEST(ジューダス・プリースト)の19枚目のスタジオアルバムである。
2024年3月6日に発売した。前作”FIREPOWER”から6年ぶりの新作である。デビューアルバム”ROCKA ROLLA”から実に50周年となる記念碑的なアルバムでもある。
まえがき
前作”FIREPOWER”が良作で、イギリスで5位、アメリカで5位とチャートで大健闘した。その一方で、バンドのブレインであるギターのグレン・ティプトンがパーキンソン病を患っていることを公表した。ツアーはアンディ・スニープが代役を務めた。2021年にはギターのリッチー・フォークナーがライブ中に大動脈破裂、手術した。
またメンバーの高齢化も顕著で、ボーカルのロブ・ハルフォードが72歳、ギターのグレン・ティプトンが74歳、ベースのイアン・ヒルが73歳、1990年にバンドに加入したドラムのスコット・トラヴィスが62歳、2011年に加入したギターのリッチー・フォークナーが44歳である。
様々な困難を乗り越えてきた。キャリアの最終作にもなりかねない、彼らの決死の覚悟が本作である。
曲の紹介
- Panic Attack
SEのような単音ギターリフから始まる。続いてゾクゾクするギターリフ。Aメロからロブのハイトーン全開。ギターの構築美。よく練られたフレーズはどこを切り取ってもかっこいい。長いギターソロも印象的。これぞ、JUDAS PRIESTの真骨頂。現代風に解釈した”Painkiller”かもしれない。アルバム中の1位、2位を争う良曲だ。 - The Serpent And The King
1曲目の勢いそのままに、2曲目も疾走チューン。Aメロ、Bメロ、サビもロブのハイトーンで緊張感がある。年齢とは裏腹に本当に力強い。間奏パートもJUDAS PRIESTらしさ全開だ。 - Invincible Shield
3曲目もマシンガンのようなリフから始まる疾走チューン。ハイトーンボーカル、切れのあるギターフレーズといいかっこいい。ギターソロ、アウトロは悶絶もの。管理人的にはこの曲がアルバムで1番だ。タイトルトラックはこうありたいものだ。 - Devil In Disguise
ミドルテンポで、アルバムとしてはひと呼吸置く感じ。でも、ギターはグイグイ来るし、サビがノリノリだ。 - Gates Of Hell
ツインリードギターでの始まりが印象的なミドルテンポのナンバー。サビの裏のギターメロもいかす。 - Crown Of Horns
哀愁漂うミドルナンバー。このメロディが響かない人がいるのか? ロブの中音域が気持ちいいし、リッチーの随所に入れたギターソロがすばらしい。 - As God Is My Witness
疾走するギターリフで始まる、スリリングな楽曲。前曲との対比で、より強力だ。この疾走感が病みつきになる。ギターソロも緊張感があってかっこいい。 - Trial By Fire
力強いミドルテンポのナンバー。ベルまで鳴っていて荘厳な装い。ロブが高らかに歌っているのもいい。 - Escape From Reality
浮遊感のあるAメロを持つミドルテンポナンバー。ベースが響く。サビの歌い方はこのバンドらしさが出ている。ラストは力強い。 - Sons Of Thunder
前作の流れを感じる、短い疾走チューン。サビはライブ映えしそうな掛け声あり。 - Giants In The Sky
本作のラストナンバー。ミドルテンポで、過去の偉人たちへのリスペクトが感じられるナンバー。JUDAS PRIESTというバンドも、各メンバーもいずれこう思われたいという気持ちもあるのかもしれない。中間パートもアコギまで入っていてしんみり。ラストのロブのパートとかグッとくるね。 - Fight Of Your Life
ボーナストラック。ミドルテンポのギターリフ中心に、ロブのハイトーンが聴ける。ちょっとロック寄りなサウンドのため、ボーナス扱いか。 - Vicious Circle
ボーナストラック。やや疾走感のあるギターリフがグイグイ引っ張っていく楽曲。中間ツインリードギターソロやBメロ・サビのノリもいいが、全体的に薄味のため、ボーナス扱いか。 - The Lodger
ボーナストラック。やや泣きっぽいギターの単音リフがイントロから入っていて、結構いい。ロブの広い音域が楽しめるし、随所にギターソロが入っているし、本編に入っていてもいいバラードだと思う。ボーナス扱いなのは歌詞のテーマがアルバムと違うからか。
MVの紹介
あとがき
名盤という言葉は、このバンドの過去の作品がすごすぎて、使いにくい。だが、それらに近いところまで迫った作品であることに違いない。このアルバムを聴いたときの高揚感はそれであると思う。
インタビュー記事で、名盤の2作品である”SCREAMING FOR VENGEANCE”(邦題:復讐の叫び、1982年)と”DEFENDERS OF THE FAITH”(邦題:背徳の掟、1984年)との前作”FIREPOWER”と”INVINCIBLE SHIELD”が対比されていた。言い得て妙な気がする。こういうのも様式美なのかもしれない。バンドでは意識していなかったようだが。
アルバムジャケットもシンプルながらかっこいい。CDを買って、ジャケットを見えるように飾りたいと思えるのも大事だ。
発売してからX(旧Twitter)で本作のコメントで盛り上がっているところも見ていてテンションが上がった。好評のようだし。
ありがとう、メタルゴッド。
2011年にこのバンドを脱退したギターのK. K. ダウニング率いるKK’s PRIESTはこのアルバムをどう感じているのだろうか。そして、KK’s PRIESTの次のアルバムはどうなるだろうか。それも楽しみである。
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