日産自動車と三菱自動車の連合のハイブリッド車の機構(システム)を見ていこう。
三菱自動車を救済した日産自動車であるが、両社のハイブリッド車を見ていくと、日産が三菱のハイブリッド技術を得たいという思惑も見えてくる。またEVを先行販売していた自動車メーカーとしても共通点がある。
日産編
日産のハイブリッドと言えば、今ではe-POWERとなるが、そこに至るまでいろいろとあった。
一番は2010年に世界初の電気自動車(BEV)のリーフを出したことだろう。当時の社長はハイブリッド車を飛び越えて、EVへと舵を切った。
しかし、ネックであった電池の容量や値段が思ったほど改善しなかったため、EVは損益分岐点を超えるほど普及しなかった(つまり赤字)。そこで、2016年にe-POWERが生まれた。
e-POWERはシリーズハイブリッドであり、エンジンで発電した電気を電池に貯め、電池から電気を使ってモーターでタイヤを回す。その一直線の動力の流れが、直列(シリーズ)の所以である。
そして「電池から電気を使ってモーターでタイヤを回す」部分はEVと全く同じである。
ノートにすでにあるエンジンを発電仕様に改造し、発電モーターを乗せた。あとはリーフの電池(容量は減らす)と駆動モーターを乗せて、e-POWERとなる。
ハイブリッド車でありながら、価格を抑えられたのはそのためである。また、電気自動車の時代になったら、発電エンジンと発電モーターを外すだけでよい。とてつもなく効率がよいものづくりができている。
2020年のノートのフルモデルチェンジに合わせて、第2世代e-POWERに進化した。
苦言を呈すなら、CMでこのe-POWERを「全く新しい電気自動車のカタチ」と言う点だ。エンジンとモーターの2つの動力がある車をハイブリッド車と言うし、その中でもシリーズハイブリッドという方式で従来から存在する。また電気自動車に発電エンジンを積む方式とみるなら、レンジエクステンダーEVであり、すでに提唱されていたものであり別に新しくもない。
できれば正しく伝えてほしいものだ。そして、モーター制御や自動運転に「技術の日産」が宿っているのだからそちらを前面に出していくべきだったと思う。
まぁ、上記のことは一般消費者には些末なことのようで、e-POWERは売れて、セレナやキックスなどのほかの車種にも搭載された。
モーターは高速走行が苦手なため、平均速度が高い欧米ではe-POWERの導入が遅れている。
日産のハイブリッドはほかにもあった。1モーター2クラッチのEV走行可能なパラレルハイブリッド。フーガ ハイブリッドとシーマに搭載された。
セレナ Sハイブリッドという車があったが、これは電気モーターでは走ることができず、エンジンアシスト量も小さいマイクロ・ハイブリッドと呼ばれるものである。既存のエンジン車に小さなモーターとバッテリーを積むだけで作れる簡易ハイブリッドであり、燃費向上も10%とわずかである。欧州メーカーの48Vハイブリッドも同様である。
三菱編
2009年にi-MiEVで軽自動車初のEVを作った会社である。その会社が出した2013年にアウトランダーPHEV(プラグインハイブリッド)が、初のハイブリット車だ。
機構はシリーズパラレルハイブリッドで、電気式4WDでリヤに駆動用モーターがあるが、フロントだけを見れば2モーター式のクラッチで動力分割するハイブリッドで、実はホンダのi-MMD(のちのe:HEV)と同様の機構である。
三菱のハイブリッドの特徴は、EV走行を主としているところだろう。平坦な道では120km/hまでEV走行ができる。エンジンでの走行も可能であるが、EV走行を大事にしているのは軽自動車初のEVを出した自動車メーカーとしてのプライドだろう。
ホンダがe:HEVに統一していくように、三菱はこの機構でエクリプスクロスPHEVや2代目アウトランダーPHEVを出したところを見ると、2モーター式のシリーズパラレルハイブリッドが正解なのかもしれない。(トヨタも2モーター式であるが、動力分割機構が遊星歯車を用いていて異なる)。
この点で、トヨタとホンダが持つ燃費に有利なハイブリットシステムを有する三菱を、日産が仲間に入れたいと思ったのは必然ともいえる。また、EVや電動ドライブを推進している点でも日産と方向性が同じである。
三菱と言うとリコール隠しや燃費偽装というニュースだけが先行して、ネガなイメージがあるかもしれない。上記は決して許されないものであるが、それとは別にハイブリット技術という点ではトヨタやホンダと並ぶ高いレベルであるのが三菱なのだ。それをちゃんと見極めてアライアンスに引き入れる日産も真贋を見分ける目があるといえるだろう。
まとめ
日産と三菱のハイブリッド車の機構を確認した。
日産はe-POWERと呼ぶシリーズハイブリッドで、EVに発電エンジン(これももともとあるエンジン流用)と発電モーターをつけたシンプルな機構で、安価だしEV化を見据えていた。ほかにもパラレルハイブリッド、マイクロ・ハイブリッドがある。
三菱はPHEVの電気式4輪駆動ではあるが、前輪だけで見れば2モーター式のクラッチで動力分割するシリーズパラレルハイブリッドである。これはホンダがe:HEVとして販売している機構と同等で、かつてホンダがいろいろ持っていたハイブリッドの中で唯一生き残ったものである。つまり、燃費の良いシステムであり、それを三菱は持っている。
日産が三菱を救済したことには、三菱がこの優秀なハイブリッドシステムを持っている点が想像に難くない。
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