ドイツのメロディック・スピードメタルバンドの祖、HELLOWEEN(ハロウィン)の17枚目のアルバムである。2025年8月27日発売。
前作から4年ぶり。2023年には日本武道館でのライブも実施した。
メンバーラインアップ
パンプキン・ユナイテッドの7人。前作から不変だ。
ボーカル:アンディ・デリス
ボーカル:マイケル・キスク
ギター・ボーカル:カイ・ハンセン
ギター:マイケル・ヴァイカート
ベース:マーカス・グロスコフ
ギター:サシャ・ゲルストナー
ドラム:ダニ・ルブレ
人数が多いとまとめるのが大変だと思う。だからこそこのバンド、メンバーは本当にすごい。
曲紹介
- Giants On The Run
アンディ・デリスとカイ・ハンセンの共作。ミドルテンポの聴かせるスタートだけど、疾走メインだ。後半のオペラチックな構成はGAMMA RAYにも通じるところがある。カイ・ハンセンの持ち味が発揮されていてうれしい。 - Savior Of The World
マイケル・ヴァイカート作曲。王道なメロディック・スピードメタルチューンで、マイケル・キスクのハイトーンを存分に堪能できる。 - A Little Is A Little Too Much
アンディ・デリス作曲。コミカルでキャッチーないかにも彼らしい曲だ。 - We Can Be Gods
カイ・ハンセン作曲。どことなく物悲しげな雰囲気を持つ疾走ナンバーで、サビのあとのシンセの音がいい味を出している。カイ・ハンセンの曲がHELLOWEENで聴けて本当にうれしい。 - Into The Sun
アンディ・デリス作曲。スローバラード。アンディ・デリスとマイケル・キスクが朗々と歌い上げる絶品のバラードに仕上がっている。今後のライブはこの曲がバラードとして採用されるかも。アルバムとしてもここが折り返し。そういうメリハリにもなっている。 - This Is Tokyo
アンディ・デリス作曲。妖しい雰囲気で始まり、「トキヨウ」のコーラスが猛烈に印象に残る。アンディ・デリスはHELLOWEEN加入前にPINK CREAM 69時代に日本からブレイクしており、日本への愛や感謝を込めた楽曲。MVを見ると、攻殻機動隊のようなサイバー世界の中華街になっており、これは日本なのかと感じてしまうが。しかし、楽曲はいい。 - Universe (Gravity For Hearts)
サシャ・ゲルストナー作曲。マイケル・キスクのハイトーンを味わうためのメロディック・スピードメタルチューンだ。8分と長尺であるが、ドラマチックな展開で長さを感じさせない快作だ。 - Hand Of God
サシャ・ゲルストナー作曲。どこかお祭りの音頭のような雰囲気があるミドルテンポのナンバー。 - Under The Moonlight
マイケル・ヴァイカート作曲。狙ったような初期のHELLOWEENのような雰囲気を持つ楽曲。サビのマイケル・キスクの歌いまわしが懐かしく感じる。 - Majestic
カイ・ハンセン作曲。曲名が自身のバンド、GAMMA RAYの8作目のタイトルと同じある。そのアルバムのタイトルチューンは”Majesty”であったが。また同じような曲をHELLOWEENでもやるのかと心配になった。しかし、それは杞憂に終わる。
8分の長尺。荘厳な始まり。中世から宇宙さえも感じる歌詞とサウンド。構築美を感じるドラマチックな展開。これもGAMMA RAYの雰囲気がある。それをボーカルが3人いるHELLOWEENで実現。アルバムのラストにふさわしい最高の楽曲だ。
ボーナスディスク
- Out Of Control
マーカス・グロスコフ作曲。彼の曲が本編に入らなかったのは久しぶりでは? カイ・ハンセンがメインボーカルでこれはこれで管理人的にはうれしい楽曲だ。 - Into The Sun (Andi Solo Version)
- Into The Sun (Michi Solo Version)
- Into The Sun (Acoustic Version Duet)
それぞれのファン向けのソロバージョンに、バンド演奏ではなくアコースティックに仕上げたバージョン。いずれもファン向けのものであるが、できればほかの新曲も聞いてみたかった。
MV紹介
まとめ
前作よりもコンパクトで、でも1曲ずつが個性的でカラフルでバラエティに富んでいる。好きな曲が人によって分かれそう。HELLOWEENってそういう魅力的なバンドだった。再認識した。前作は7人でしっかりまとめ上げようと少し力み過ぎていたのかもしれない。こちらは自由で快活なムードが漂っていて好印象だ。
カイ・ハンセンの楽曲、歌での参加が増えたのもうれしい。強力なソングライター、ボーカルがいる中で、しかもゲストのような立場であった前作では少し控えめであった。今回は本領発揮。アルバムがカラフルになった一因だろう。
40年近く活動しているバンドで、過去の名曲を演奏しているだけでもライブは十分に盛り上がる中で、それでも驚異のクオリティで新曲を生み出し続けていることに脱帽だ。またこれだけの才能を持ったミュージシャンが7人で結束していることもすばらしい。バンドのいい状態が、作品に良い影響を与えていることは間違いないだろう。
守護神伝の第3章がますます聴きたい。でも、変なプレッシャーを与えてバンドの勢いに水を差すこともしたくない。たぶん、今のいい状態をみんなが壊さないようにうまくやっていくのが幸せなこと、願うべきことなのかもしれない。
いつまでも続いてほしいけど、変わらないものはない。だからこそ、今の7人の奇跡の共演を目いっぱい楽しみたい。また来日公演があったら行きたい。
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