ドイツのメロディック・メタルの至宝、Masterplan(マスタープラン)。元Helloweenのギタリスト、ローランド・グラポウが結成し、かつてメタル界に衝撃を与えたこのバンドが、ついに再始動する。
2026年5月22日、実に13年ぶりとなるオリジナル・スタジオ・アルバム『Metalmorphosis』のリリースが決定した。
なぜ、これほどの長い年月が必要だったのか。その間、稀代のギタリストであるローランドは何を考え、どのように過ごしていたのか。彼が語った言葉の端々から、新作への期待を込めてその軌跡を辿る。
「13年」という歳月が意味するもの
前作『Novum Initium』がリリースされたのは2013年のことだ。その後、2017年にはHelloween時代の楽曲をセルフカバーした『PumpKings』を世に送り出したが、純粋な新曲によるアルバムとしては、干支が一周する以上の時間が経過したことになる。
この「空白」について、ローランドは最近のインタビューで非常に率直に語っている。
「この間、ずっとライブはやっていたし、スタジオ・ワークも止めていなかった。ただ、自分のアルバムを完成させるための『時間』が圧倒的に足りなかったんだ」
彼はスロバキアに自身のスタジオ「Grapow Studios」を構え、敏腕プロデューサーとしての地位を確立していた。Lords of BlackやSerious Blackといった実力派バンド(たまたまだけど、黒という名前ばかりだ)の制作を次々と手掛け、彼のスケジュールは半年先まで予約で埋まる日々であった。皮肉にも、裏方としての圧倒的な成功が、自身のバンドの制作を後ろ倒しにする最大の要因となっていたのである。
Helloween再結成の影で——揺るぎない「孤高のプライド」
この長い沈黙の間、メタル・コミュニティを最も騒がせたのは本家Helloweenの劇的な再結成(Pumpkins United)であった。カイ・ハンセンとマイケル・キスクの復帰に沸く世界。そこにローランド・グラポウの名がなかったことに、心を痛めたファンも少なくない。
当時のローランドの心境は、複雑ながらも非常に筋の通ったものであった。
海外メディアのインタビューに対し、彼はかつての相棒ウリ・カッシュ(Dr)から「Helloweenの再結成に対抗して、俺たちも何かやろうぜ」という誘いがあったことを明かしている。しかし、ローランドはその誘いを断った。
「過去を振り返って再結成ビジネスに乗り、かつての確執がある相手と無理に組むよりも、今の素晴らしいメンバー(Voのリック・アルツィら)と、妥協のない純粋な音楽を作りたい」
彼は「Helloween本隊との和解や再結成」には前向きな姿勢を見せつつも、安易な「対抗勢力」になる道は選ばなかった。そこには、過去の遺産で食いつなぐことを良しとしない、一人のアーティストとしての強烈な自負が刻まれている。
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アンディ・デリスとの確執、そして「雪解け」
また、ファンの間で長年囁かれていたアンディ・デリスとの不仲についても、ローランドは沈黙を破った。一時は「裏切り者」とまで呼ばれたとされる彼だが、本人は「なぜ嫌われているのか分からない。数年前に会った時は何時間も楽しくビールを飲んだのに」と困惑を口にしていた。
しかし、2025年に入り、事態は好転する。Helloween側が公式に過去のトラブルを否定し、彼らの別れが「友好的なものだった」とする声明を出したのだ。この精神的な「雪解け」こそが、ローランドが再びMasterplanとして前を向くための、最後の一押しになったといえるだろう。
新作『Metalmorphosis』に込められた「メタル魂」
紆余曲折を経て、ようやく届けられる新曲たち。先行シングル「Chase The Light」を聴けば、彼がこの13年間に蓄えてきたエネルギーがどれほどのものか理解できるはずだ。
ローランドは新作についてこう語る。
「最近のメロディックすぎる、ポップでコマーシャルな音楽には興味がない。今作はよりダイレクトで、より『メタルらしい(Metalish)』アルバムになる」
13年前から温めていたアイデアを、一切の妥協なしに磨き上げ、現代のヘヴィネスと融合させる。プロデューサーとして数多のバンドを導いてきた彼が、自らのために全精力を傾けた結果が、この『Metalmorphosis(金属変態)』というタイトルに集約されているのだ。
鉄壁の布陣——「最高純度」を支える実力派メンバーたち
新作『Metalmorphosis』を語る上で欠かせないのが、近年のMasterplanを支える強固なラインナップだ。ローランド・グラポウが「妥協なし」と断言できるのは、長年苦楽を共にしてきた現在のメンバーへの絶大な信頼があるからに他ならない。
現在のラインナップは、派手なメンバー交代が繰り返された初期とは対照的に、驚くほどの結束力と安定感を誇っている。
■ ローランド・グラポウ / Roland Grapow (Guitar / 2001-)
【キャリア:ex Helloween】
バンドの創設者でありリーダー。Helloweenの黄金期を支えたメロディ・メーカーとしてのセンスは、自身のスタジオでの長年の研鑽を経て、より重厚で洗練されたものへと進化した。今作では全楽曲のプロデュースも手掛ける。
■ リック・アルツィ / Rick Altzi (Vocals / 2012-)
【キャリア:At Vance, ex Thunderstone】
2012年の加入からすでに10年以上、Masterplanのフロントマンを務める。ヨルン・ランデという巨大な影を払拭し、自身のパワフルでブルージーな歌声をバンドの「新しい顔」として定着させた。彼の圧倒的な歌唱力が、新作の「よりメタルらしい」方向性を決定づけている。
■ アクセル・マッケンロット / Axel Mackenrott (Keyboards / 2002-)
【キャリア:ex Beautiful Sin, Gamma Ray (Liveサポート)】
2003年のデビュー直前から在籍する、ローランドの最良の理解者。20年以上にわたりバンドの劇的なサウンドスケープを支え続けてきた。彼の流麗なキーボード・ワークこそが、Masterplanを単なるパワーメタル・バンドに留めない「気品」を与えている。
■ ヤリ・カイヌライネン / Jari Kainulainen (Bass / 2012-)
【キャリア:ex Stratovarius, ex Evergrey】
北欧メタルシーンの伝説的ベーシスト。Stratovariusの黄金期を支えたその超絶技法は折り紙付きだ。リック・アルツィと同期の2012年加入以来、バンドのボトムを完璧に支え続けている。彼のような実力者が10年以上在籍し続けている事実が、現在のバンドの居心地の良さを象徴している。
■ ケヴィン・コット / Kevin Kott (Drums / 2016-)
【キャリア:Almanac, At Vance】
2016年に正式加入。ヴィクター・スモールスキ率いるAlmanacなどでも活躍するテクニシャンだ。セルフカバー作『PumpKings』を経て、ついにオリジナル・フルアルバムでそのダイナミックなドラミングを披露する。
【結束力の証:10年変わらぬ中核メンバー】
特筆すべきは、フロントマンのリック、ベースのヤリが加入してからすでに14年(制作期間含む)が経過しているという事実だ。これは、ヨルン・ランデやウリ・カッシュ、マイク・テラーナが在籍していた初期の「スーパーグループ」としての不安定さを完全に脱却したことを意味する。
「過去の有名メンバーとの再結成」という安易な道を選ばず、この10年以上揺るがなかった鉄壁の5人で作り上げたからこそ、新作『Metalmorphosis』はMasterplan史上、最もバンドとしての一体感が強い作品になると期待されている。
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終わりに:ついに「その時」が来た
13年という時間は、一人の人間を、そしてアーティストを成熟させるのに十分すぎる時間であった。
ローランド・グラポウは、過去の栄光への執着を捨て、今の自分自身の幸せと音楽的な探究心を選択した。彼が手掛けてきた数々のバンドの成功、そしてHelloweenとの複雑な感情の整理——それらすべてを飲み込んで、Masterplanは再び力強く羽ばたこうとしている。
「ついに終わって嬉しいよ。何年もかかってしまったけれど、一切の妥協はしていない」
自信に満ちたその言葉を信じて、5月22日のリリースを待ちたい。ジャーマン・メタルの魂を守り続けた男の「逆襲」が、今ここから始まる。
【Masterplan 最新情報】
Album Title: Metalmorphosis
Release Date: 2026年5月22日
Single: “Chase The Light” (Now Streaming)
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