ホンダというとエンジン屋で、F1やMotoGPで活躍のイメージである。しかし、かつてトヨタとハイブリッド車の低燃費性能で激しい競争を繰り広げた。
ホンダのハイブリッドシステムは世代ごとに名前も違えば、システムも異なる。変遷をまとめることで、どんなシステムが搭載されているか理解できる。
どんなシステムかわかると、22年10月末に起きたいろは坂でのホンダのハイブリッド車がストップしていた事件について、どの車がそうなるのかわかる。その先にシステムの詳細を理解すると原因もわかるが、今回はその手前までとしたい。
前置き
現在は低燃費の数値でアピールしあう感じではなく、カーボンニュートラルに向けて何ができるかに変わった。トヨタもホンダもFCEV(燃料電池自動車、FCVとも)を販売する数少ない自動車メーカーであるし、BEV(バッテリー電池自動車、EVとも)も販売している。
ホンダというと、トヨタのプリウスに対してインサイトという低燃費カーを出した。小型車に低燃費の主戦場が移ったときもトヨタのアクアに対してフィットハイブリッドで対抗してきた。
トヨタはトヨタハイブリッドシステム(THS)で初志貫徹しているが、ホンダは初代インサイトとフィットハイブリッドでハイブリッドシステムが異なる。いつから変わったか、何が変わったかを簡単に理解しておくとよいだろう。
22年10月末に起きたいろは坂でのホンダのハイブリッド車が次々とストップ事件、あれがどの世代のハイブリッドシステムか理解するだけでも、車選びや乗り方で対応でき、不安や再発を防げるだろう。
ホンダハイブリッドシステムの変遷
俯瞰できるように図で表示した。
上の数字は西暦の下2桁である。こう見ると4種類(改名を含めると5種類)あることがわかる。次に各システムを見ていこう。
IMA(Integrated Motor Assist)
ホンダハイブリッドシステム第1弾のIMA(Integrated Motor Assist)を搭載した初代インサイトを1999年に発売した。
パラレルハイブリッドと分類されるシステムで1つのモーターのパワーがエンジンのパワーをアシストする。その機構ゆえEV走行はできなかったが、ホンダは気筒休止というエンジンの技術を用いることで2代目インサイトではEV走行を可能にした。特筆すべきは軽量コンパクトなシステムであることと、ハイブリッドでありながらマニュアルトランスミッションとの組み合わせができることで、ハイブリッドスポーツカーのCR-Zを生み出した。
エンジン屋のホンダらしい、エンジンに主眼を置いたハイブリッドシステムと言えるだろう。
SPORT HYBRID i-DCD
ホンダハイブリッドシステム第2弾はSPORT HYBRIDと名付けられた3種類である。違いはモーターの数と車の大きさである。
このi-DCD(Intelligent Dual Clutch Drive)は2代目のフィットハイブリッドに搭載され2013年にデビューした。1モーターで主に小型車向けのハイブリッドシステムである。
1モーターということで、前項のIMAと同じであるが、機構は進化した。デュアルクラッチトランスミッションを採用したことで、エンジンとモーターが切り離されEV走行が可能になった。2つのクラッチを使って、エンジンとモーターを切り替えるシステムが多い中、このデュアルクラッチトランスミッションを用いてそれを実現したのはまさに意欲作と言っていいだろう。モーターがついているのは奇数段(1、3、5、7速)である。そしてプラネタリーギヤを介すことで、モーターのだけで走行するEVモードが可能なのである。
加速が2段階で来るのもこのシステムの魅力だろう。キックダウンしたときに、まず奇数段のモーターで加速し、その後、偶数段のエンジンでの加速になる。ハイブリッドで燃費がよい上に、走りも楽しめる。これこそホンダの魅力だろう。
ただし、欠点もある。冒頭で話した、いろは坂で止まっていたのはこのハイブリッドシステムである。
デュアルクラッチトランスミッションの複雑なハイブリットのキーとなる、クラッチが乾式タイプで、坂道で走行・停止を何度も繰り返しているうちにオーバーヒートしてしまったようだ。
2023年5月現在、新車でこのシステムを搭載した車種はフリードハイブリッドのみである。現行モデルが登場して7年目のためフルモデルチェンジが近いし、ほかのホンダ車がe:HEVに移行したことを考えると、新型フリードハイブリッドはe:HEVになるだろう。そのとき、i-DCDは終焉を迎えそうだ。
2024年5月、新型フリードを発表。通算3代目。ハイブリッドはe:HEVとなる。6月に発売予定。
SPORT HYBRID i-MMD
ホンダハイブリッドシステム第2弾で、2モーター、中型車向けはi-MMD(Intelligent Multi Mode Drive)である。このシステムは2013年に2代目のアコードハイブリッドでデビューした。
トヨタハイブリッドシステムと同じシリーズパラレルハイブリッドと分類されるものであるが、高速時はエンジンのみで走ることが可能であるのが特徴である。もちろんEV走行もできる。通常時はエンジンが発電し、モーターで走るシリーズハイブリッドとして機能する。
ホンダの特徴はi-VTECというエンジン技術であろう。エンジンは燃費を考慮してアトキンソンサイクルであるが、これは膨張比>圧縮比とするものである。普通にシリンダー内でピストンを上下させると膨張比=圧縮比となる。
そこでミラーサイクルと呼ばれる、吸気バルブを遅く閉じて圧縮比を小さくする。ここまでが一般的なハイブリッド車のエンジンである。
しかし、ホンダはここでi-VTEC(可変バルブタイミング・リフト機構)を用いて、低燃費用のカムと高出力用のカムを切り替える。これにより低燃費でありながら、必要なときは高出力を出せるエンジンとなる。
ここがホンダがSPORT HYBRIDと評するところであり、エンジン屋のプライドを感じる。スポーツな走りも可能なハイブリッドシステムである。
現在も新車で販売されているが、順次e:HEVへと名称が変更された。
SPORT HYBRID SH-AWD
ホンダハイブリッドシステム第2弾で、3モーターの大型車向けがSH-AWD(Super Handling All-Wheel-Drive)である。
3モーターと言うが、実際は1モーターのハイブリッドシステム(i-DCD)と、駆動を持たない車輪に2モーターで駆動を与え、4WD(4輪駆動)を実現したものである。
2015年に5代目のレジェンドでデビューし、2代目のNSXにも搭載された。2機種とも2022年で終了し、現在のところ本システム搭載の新車はない。
e:HEV
ホンダハイブリッドシステム第3弾のように見えるが、実は2020年にi-MMDを改名してe:HEVとなった。ホンダのハイブリッドシステムはこれまで4種類あったが、このシステムに統合していくようだ。
まとめ
ホンダハイブリッドシステムは登場する名前が多いため、複雑に見える。
しかし、よく見ていくと1モーター主体の系譜IMA→i-DCDとSH-AWD、2モーターで今後の主力のe:HEV(旧称i-MMD)に分けられることがわかる。
随所にエンジン屋としてのホンダのプライドが感じられるのもよかった。
2040年にはBEV、FCEVのみにすると宣言した。エンジンはないが、それでもそこにもホンダらしさの残る形でカーボンニュートラルを実現してくれるだろう。
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